幸せな結婚の宴

ある田舎町で、家の中庭に集うにぎやかな人だかりに出会った。
家の前には、ハートマークで飾られた看板が出ている。ハートマークの中には二人の名前が書かれているところを見ると、どうやら結婚式らしい。立ち止まって人だかりを眺めている私たちに気付いた人々は、私たちの手を引っぱって家の中に招き入れた。すぐに小さなグラスが私たちに手渡される。この地方の名物の、サボテンから作るメスカル酒がなみなみと注がれている。
「さあさあ、今日のような嬉しい日には、どんどん飲みましょう!」 朝から飲みつづけているらしい男性たちが、上機嫌で次々と私たちに酒を勧める。
「結婚式は今日これからはじまるんですか?」 そう聞く私に、男性たちは笑いながら答える。
「結婚式は昨日終わったよ。でもこれからまだまだ一週間はこんな宴が続くんだよ」 びっくりしている私の前に、女性たちが大皿に山盛りになった食事を運んでくる。
「これはほんの、おやつみたいなものですよ。朝食と昼食の間のね」 中庭には三十人ほどのブラスバンドが音合わせをしていて、その周りをいくつかの長テーブルが囲み、人々が思い思いに酒を飲んだり、食事をしている。 「食べきれなくても心配しなくていいよ。食べ残しはおみやげに家に持って帰るのが習慣だからね」 同行の友人、ホルヘがそう耳打ちする。 庭の奥では女性たちが、驚くような大鍋に次々とニワトリを丸まんまぶちこんでいる。覗いてみると、何十羽入っているのか数え切れない。夜のごちそうの準備らしい。 やがて、ブラスバンドが軽快に音楽を奏ではじめた。人々は待ってましたとばかりに立ち上がり、パートナーの手を取り踊りはじめた。子どもたちもはしゃいで、庭の中を駆け回っている。
結婚式は人生の重要イベントだから、財産すべてはたいても、できるだけ豪華に楽しくやるのがこのへんのしきたりなのだと、ホルヘがおしえてくれる。 花嫁と花婿が、仲むつまじく手に手を取って挨拶に来てくれた。せっかくなので記念撮影をしましょう、と言うと、ちょっと待って、と言って、小さな女の子を二人連れてきた。 「かわいいわね、妹さん?」 花嫁にそう聞くと、いいえ、私の子どもなんです、と恥ずかしそうに言う。 このカップルは、実際は五年前に結婚しているのだが、そのときはまだ金銭的な余裕がなくて、盛大な披露宴ができなかったのだという。お金ができてから結婚式をあげるのはよくあることだよ、とホルヘがまたおしえてくれる。 純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁は、幸福に光り輝いて、眩しさに目がくらむほどだ。 さっき食べたばかりなのに、また食べ物が配られはじめた。
私は目を白黒させながらも、今日は動けなくなるまで食べて飲んで、二人の幸福にあやかりたい、と決心した。