広い海が僕たちの庭

マダガスカルの西海岸には、真っ白な砂浜と青い海が延々と広がっている。
こんなに美しいものは、神が作ったに違いない、と、思わず感嘆の声をあげてしまうほどだ。漁師の家族たちは、そんな海を目の前に、砂浜の上に小さな家を建てて暮らしている。木の骨組みに草を葺いただけのシンプルな家々に、海からの風が爽やかに吹き抜ける。男たちは小さな舟に乗り、網を仕掛けたり、海に潜って銛で突いて魚を捕る。ここまではまともな道路もないし、バスも走っていないので、どこに行くにも舟を使う。小さな舟に大きな白い帆をあげて、風に乗ってすいすいと海伝いに周辺の村に行く。子どもたちは海が大好き。家の目の前が海だから、朝から晩までずっとパンツ一丁で過ごして、海で遊びながらちゃんと家のお手伝いもしている。生まれたときから片時も海と離れたことはない。あまり遊びすぎていると、ときどきお母さんの雷が落ちるけど、そんなことは全然気にしない。お手伝いをしなさいって怒られると、その場は取り繕って忙しく働くふりをするけど、またしばらくすると遊びのほうに熱中してしまう。お父さんのように舟に乗って漁に出ることはまだできないけど、波打ち際のそばでざるや網を使って小魚を捕ることは得意だ。自分で作った釣り竿で、思いがけない大物を吊り上げることだってある。
お父さんの舟が漁から戻ってくると、村はがぜん忙しくなる。村の人たちみんな総出で、魚を舟からあげて、さばいて干物を作りはじめる。捕れたての魚を牛車に乗せて、何十キロか内陸に入った村の市場に売りに行くこともある。大物が捕れたときは、しばらく歩いたところにある外国人が泊まるバンガローに売りに行くけど、そこもいつもお客さんがいるわけではないので、売れるか売れないかは行ってみなけりゃわからない。ついこの前までは学校もなかったけれど、最近は、教会の神父さんが学校を作ってくれた。
日曜日に教会に集まり賛美歌を歌うのが、村の人たちの一番の楽しみだ。 贅沢なものは何もないけど、海と共に生きることは別の意味での豊かさがある。
男の子たちは海とたわむれながらたくましく成長していって、いつかきっと、お父さんのような立派な海の男たちになっていくことだろう。