みんなおんなじ!
マダガスカルは、世界で第四番目に大きな島だ。
1500年から2000年前までは人間が住んでいなかったこの島では、動植物が独自の進化を遂げ、そのほとんどがマダガスカルにしか生息していない固有種だ。マダガスカルには、九種類のバオバブの木があるが、そのうち七種類はマダガスカルの固有種だという。
マダガスカルの西海岸沿いの港町、ムルンダヴァの近くには、美しいバオバブの木々が並ぶ「バオバブ街道」がある。バオバブは、見れば見るほど不思議な木だ。語りかけてくるような存在感と、強い生命力に満ちている。バオバブ街道へは町からガタガタの道を何十キロも行かなくてはならないが、その姿にひと目だけでも出会いたいと願う人々が世界中から集まってくる。
バオバブの並木までの道は、時おり牛車に乗った農民がのんびりと通り過ぎるだけの田舎道だ。抜けるような青い空に向かってまっすぐに伸びるバオバブの木が、何十本か立っている並木のそばには、道沿いにぼつんと置かれた小さな木の台でコーヒーだけを出す店がある。その周りには数軒の簡素な家がある以外は何もない。私たちは、様々な時間帯に木々を眺めたくて、毎日ここに通い、夜明けから日没まで、一日中バオバブのそばで過ごした。そうすると、一日の間に何度も木の台の前に座り、コーヒーを飲むことになる。そこにはいつも子どもたちが大勢集まっていた。小さな子どもたちを大きな子どもたちがあやしながら、彼らはバオバブの実を拾い、それを訪問客に売ろうとしていた。
バオバブの実を開けると、中にはぱさぱさとした甘酸っぱい種が詰まっている。食べる実はほとんどないけど、ほんのりと味がある種をしゃぶるのだ。簡単に来れるところではないから、一日に訪れる観光客はほんの数人だ。車が到着すると、子どもたちはそこへ走っていき、それぞれ手に持ったバオバブの実を差し出す。外国人がひとしきり写真を撮って、また車に乗り込んで去っていくと、そのあとは何の変化もない静かな時間が戻ってくる。そうすると子どもたちは、バオバブの木の前で遊び出すのだ。首都のアンタナナリボはおろか、数十キロ離れたムルンダヴァの町にも、めったに行くこともない子どもたちだけど、ここにいるだけで、いろんな国から来たいろんな人々に出会う。夕焼けがバオバブの木を照らしはじめるのを待つ間に、私はコーヒーを飲みながら、今まで私たちが旅してきた様々な国の写真を子どもたちに見せた。彼らは大喜びで、熱心に一枚一枚の写真を見ていく。アジアの山で暮らす人々や、メキシコの市場で生き生きと働く人々などの写真に見入りながら、子どもたちは口々に何かを言っている。違う衣装や風景に驚きながらも、写真の中の子どもたちの顔を指差して、わーっと声をあげてはしゃぐ。どうやら、この顔は誰に似ているとか、そういう話をしているらしい。そうやって見てみると、どの国の子どもたちにも、共通する雰囲気がある。ガキ大将、甘えん坊、引っ込み思案な子、ひょうきんな子…。
「みんな、おんなじだね」子どもたちは、私にそう語りかけてくる。
バオバブの木の前で子どもたちと過ごしたこんな静かで暖かい時間を、私はきっと一生忘れないだろう。