カメルーンの北部の町にて
熱帯雨林のピグミーたちと別れ、ひたすら北上していくと、風景は森から乾燥地帯へと刻々と変化していった。自然の景観の変化にともない、人々の顔も着ている衣装も変わっていくのは面白い。カメルーン北部では、イスラム教を信仰する人々が多い。
町の各所に大小様々なモスク(イスラム寺院)が建ち、祈りの時間になると哀愁を帯びたアザ―ンが響き渡り、人々を祈りへと誘う。
金曜日は、イスラム教徒にとって一週間で最も重要な祈りの日だ。壮麗な衣装に身を包んだ老若男女が、町の中心にあるモスクに大集合し、その人波に遮られて町は大渋滞を引き起こす。そんな人々を目当てに、物売りたちも今が稼ぎ時とばかりに商売に精を出す。子どもたちも、豆で作った蒸しケーキや、揚げ物、ダンゴなどちょったスナックを持って、人ごみの中を縫って売り歩くのに忙しい。
金曜日のモスク前の広場は、お祭りのようににぎやかだ。撮影をはじめた我々の前に、我こそが誰よりも美しいとばかりに、自慢の衣装を次々と披露しに集まってくれる。光沢のある布地に豪華な刺繍をほどこした、幅の広い貫頭衣を、両肩にたくし上げるしぐさが目を見張るほど優雅だ。やがて祈りの時間になると、人々は同じ方向に向かって座り、一斉に地面に頭をつけて礼をした。広場に集まった何万人もの人々の動きが、海岸に寄せては引いていく波のようだ。一時動きが静止すると、あたりは静寂に包まれる。
祈りに満ちた人生の、何と美しいことか。イスラムの祈りの言葉は知らないけれど、私は彼らと共にしばし黙とうすると、神聖な祈りの海に身を任せた。